March 7, 2024

SECが気候関連情報開示規則を最終決定

( 当記事は、モロー・ソダリの北米ESGアドバイザリー・チームが作成したレポートの日本語訳です。)

要旨

米国証券取引委員会(SEC)は、長らく待望されていた気候関連情報開示規則を最終決定しました。早ければ2026年から開示が義務付けられ、米国の上場企業が影響を受けることになります。開示が義務化される情報は、事業に重大な影響を与えた、または与える可能性のある気候関連リスク、気候関連リスクに対する取締役会および経営陣の監督、 重要な気候関連リスクの特定・評価・管理のためのプロセス、悪天候その他の自然現象によって発生したコスト、 登録企業のステータスによっては、スコープ1とスコープ2の排出量、またそれらの認証などです。

承認されたSECの気候関連情報開示規則

SECは2022年3月に初めて気候関連情報開示規則草案を提案し、2024年3月6日の会合で最終案を承認決議しました。この規則は全ての米国上場企業を対象に、登録タイプ別に段階的に実施され、大規模早期提出会社(LAF)は2026年から、早期提出会社(AF)は2027年から、非早期提出会社(NAF)、小規模報告会社(SRC)、新興成長会社(EGC)は2028年から、前会計年度のデータに基づいて報告し、遵守することが求められます。以下は、開示スケジュールの要約です。

 右項記載以外の 全開示緩和活動の財務的 影響と目標、移行計画スコープ1及び スコープ2の排出量限定的保証合理的保証
LAF2025年度2026年度2026年度2029年度2033年度
AF2026年度2027年度2028年度2031年度N/A
SRC, EGC, NAF2027年度2028年度N/AN/AN/A

この画期的な決定により、SECに登録されている上場企業は、前年度の10-K提出書類に気候関連情報の開示を含めること、スコープ1・スコープ2排出量については前年度第2四半期の10-Q提出書類で報告することが義務付けられます。

当初規則案の内容は、この最終規則に概ね反映されています。特に注目すべき点は、最終規則に、以下の主要開示事項が含まれていることです。

  • 大規模早期提出会社(LAF)及び早期提出会社(AF)対象の、重要なスコープ1・スコープ2の排出量データ、更に段階的に、限定的なレベルでの認証、最終的にはLAFについて合理的なレベルでの認証の取得
  • 対象企業の戦略、事業、または財務状況に重大な財務的影響を与えた、または与える可能性が合理的に高い気候関連リスク、またそれらのリスクから生じる、現実の、及び潜在的な重大なる影響
  • 重大な気候関連リスクの評価と管理における取締役会または経営陣による監督
  • 気候関連の目標(存在する場合)、および移行計画、シナリオ分析、内部炭素価格(使用した場合)や目標追求による財務的影響などの重大な気候関連リスクに対する緩和・適応活動に関する情報
  • 財務諸表の注記で開示される、資産計上費用・損失を含む、厳しい気象現象その他の自然条件の結果として生じる費用
  • 財務諸表の注記で開示される、資産計費用・損失を含む、カーボンオフセットおよび再生可能エネルギークレジット・証書REC(利用した場合)に関連する費用。

モロー・ソダリの視点

EUのCSRD(企業サステナビリティ報告指令)やカリフォルニア州のSB253・SB261など、世界中で強化される気候関連情報開示規制と合わせ、気候関連情報開示に関するSECの最終規則は、投資家が求めていた、一貫性、比較可能性、信頼性のある気候関連情報の開示を確立する一助となるものです。

しかしScope3排出量その他の開示案が最終規則から削除されたため、グローバルな同業他社に課される開示と若干のギャップが残っており、投資家とのエンゲージメントにおける焦点となり続けると思われます。SECによる気候関連開示情報は投資家の要請に応えるものではあるものの、SECを最低基準と捉え、自社の投資家に必要な追加的気候変動関連情報や、将来の開示管理に必要なプロセス・システム・統制を評価することを推奨します。

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