February 2, 2024

2024年気候変動関連情報開示規制:「カリフォルニアの日差しを浴びながらフルスピードで進む」

( 当ブログは、2024 年 1 月 26 日に米国モロー・ソダリが発表したブログの日本語訳です。)

2024年気候変動関連情報開示規制:

「カリフォルニアの日差しを浴びながらフルスピードで進む」

2024年は、人工知能の社会的影響へ対処や、選挙を念頭にしたESGに関する議論など、サステナビリティの最前線では「keep-us-on-our-to-year(今年は気持ちを引き締めて!)」となりそうですが、企業のサステナビリティ部門において重要な中心課題となっている分野があります。「気候変動関連情報開示」です。

米国では、証券取引委員会(SEC)の規則案は少なくとも 4月まで進捗しない状況ですが、一方でカリフォルニア州が先行して、3つの画期的な法律―SB253(気候関連企業データ説明責任法)、SB261(気候関連財務リスク法)、AB1305(カリフォルニア州自主的炭素市場開示法)―を制定しました。

カリフォルニア州で事業を行う売上高5億米ドル以上の公開企業・非公開企業、あるいはカリフォルニア州で事業を行い、かつカーボンオフセットによりネットゼロ、カーボンニュートラル、または大幅なGHG排出量削減を主張する企業は、これらの法律の1つ以上が適用される可能性があります。

証券取引委員会を飛び越えて全米に適用される州法

これらの規制は、非上場企業・上場企業の双方に適用され、温室効果ガス排出量(Scope3を含む)、気候変動関連の財務リスク、移行計画について、より包括的な情報開示を求めるものです。SECが検討中の規制案は“重要な”Scope 3排出量に重点を置いていますが、カリフォルニア州の規則はより踏み込んだものとなっています。例えばSB253は、全ての関連Scope 3排出量の開示を義務付けると思われます。

またこの法律は、カリフォルニア州で“ビジネスをする”、またはカリフォルニア州で事業を営みネットゼロやカーボンニュートラルの達成を主張する、一定の売上高を有する企業に適用されるため、この規制は米国全土に、潜在的には国際的にも影響を及ぼし、気候変動に対する企業の透明性基準を引き上げることになります。例えばSB253では、違反した場合年間50万ドル以下の罰金が科されます。

端的に言えば、問題は誰が、何を、いつ開示しなければならないかということ(詳細は最後に記載):

・SB253は、カリフォルニア州で事業を営む売上高10億米ドル以上の企業に対し、温室効果ガス(GHG)プロトコルに従ってGHG排出量を毎年測定し、公表することを義務付けており、Scope1及び2は2026年から、Scope3は2027年から公表しなければなりません。各Scopeに対する保証(Assurance)は2026年から2030年にかけて、様々なレベルで段階的に実施されます。

・SB261は、カリフォルニア州内で事業 を行う売上高5億米ドル以上の企業に対し て、気候関連財務情報開示タスクフォ ース(TCFD)に準拠した定性的な気候関連財務リスク報告書を、2026年から隔年で公表するよう義務付けています。なお、保険会社は適用除外となっています。

・AB1305 は、カリフォルニア州で事業を行う企業で、カーボン・ニュートラルまたはネット・ゼロの達成を主張する企業に対し、自主的カーボン・オフセットの利用に関する詳細情報の提供を義務付けており、2025年(2024年データ)から適用されます。

カリフォルニア州の規制は米国企業に高いハードルを設定することになりますが、連邦政府による義務化実施や、他の州が同様の規制を検討するに際して、企業に先手を打つ機会を与えた、と考えることもできます。例えばカリフォルニア州に続き、ニューヨーク州も独自の気候情報開示規制を検討中です。またイリノイ州、コロラド州、ミネソタ州は、気候変動リスクと透明性に関する、より限定的な規制を検討しています。

慣れた指南書で構築:TCFDとGHGプロトコル

カリフォルニア州の規制は米国では先駆的な取り組みですが、国際的な義務的基準や自主的基準と共通点があります。例えばEUのCSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive)のE1気候変動基準、IFRSのサステナビリティS2基準、GRI(Global Reporting Initiative)の新しい気候変動基準などです。

主要な類似点は、TCFD(現在は国際サステナビリティ基準委員会の一部)の原則主義を基盤にしており、バリューチェーン全体にわたる排出量(GHGプロトコルの利用が前提)やリスクに関する重要な情報と、それに対処するための計画の開示が求めてられている事です。すでにTCFDに準拠した報告書を作成している企業や、CSRD報告書やIFRS S2報告書の準備を進めている企業は、全く同じではないとはいえ、重複する部分を多く見つけることができるでしょう。またカリフォルニア州法は、他の国際基準に沿った報告によって企業が義務を果たすことを認めています。

まずやるべき事

すでにサステナビリティ報告書を導入しているのであれば、ゼロから始める必要はありません。カリフォルニア州の要件は、差別化を図り、事業の強靭性を強化する機会だと考えてください。その方法は以下の通りです:

・適用可能性を評価する。自社が、これらカリフォルニア州法のいずれかに基づく義務を負うことになるかどうかを判断する。特にAB1305は、適用時期が早く、また適用範囲が広い(売上高の閾値がない)ため、注意が必要。

・重複を探す。前述の通り、気候関連の開示は、 TCFDのような確立されたフレームワー クの上に構築されている。また基準設定機関は、 相互運用性をサポートするために協力してきた。既にTCFDや他の基準(例:GRI climate、CDP)を用いて報告を行っている場合は、既に先手を打っている。

・バリューチェーンとの連携をする。企業が直面する最大の課題のひとつは、バリューチェーン全体からScope3の情報開示に必要な投資適格なデータを収集することである。上流・下流双方について、その事業活動や関係性を理解することが重要である。これには、進化している炭素会計ツール(ソフト)が役に立つ。

・監査対応を重視する。サステナビリティ部門と財務部門が連携し、監査に耐えうる統制とデータ収集方法を確立する。すべての基準には、保証に関する何らかの期待や推奨が含まれている。透明で検証可能な開示は、特に投資家に対する信頼性と意思決定有用性の獲得に有効である。

カリフォルニア州は長きにわたり環境公共政策のリーダーであり、今回の動きは、気候情報開示の方向性を示す先行指標として捉えることができます。気候変動関連のリスクや影響を開示し、管理することは、単なるコンプライアンスではなく、資源が制約される世界において自社のビジネスを将来にわたって維持するための鍵となり得るのです。

モロー・ソダリの北米ESGチームは、貴社が必要事項を理解し、気候変動関連の戦略や開示を策定するお手伝いをいたします。詳細は当社までお問い合わせください。

気候関連企業データ説明責任法(SB-253)

開示義務者

カリフォルニア州で事業を営む、年間売上高10 億米ドル以上の株式会社、パートナーシップ、LLC、その他事業体

開示内容

TCFDで使用されている、GHGプロトコルに従って計算された排出量

開示時期

 ・2026:Scope1とScope2のGHG排出量(限定的保証)

 ・2027:Scope3のGHG排出量(保証不要)

 ・2030:Scope1とScope2のGHG排出量(合理的保証必須)

 ・2030: Scope3のGHG排出量(検討中:限定的保証)

気候関連財務リスク法(SB-261)

開示義務者

年間売上高5 億米ドル以上の株式会社、パートナーシップ、LLC、その他事業体 

保険会社は対象外

開示内容

TCFDに準拠した定性的な気候関連財務リスク報告書

開示時期

 ・2026:気候関連財務リスク報告書

カリフォルニア州自主的炭素市場開示法(AB1305)

開示義務者

カリフォルニア州で自主的カーボンオフセットを販売・売却する事業体

カリフォルニア州で事業を営み、カーボンニュートラルまたはネットゼロ達成を主張する事業体

開示内容

自主的カーボンオフセットプロジェクトの詳細、オフセットによって期待されるGHG排出削減量が得られなかった場合の対応、排出削減量の算出方法

開示時期

 ・202511日(2024年のデータが対象):自主的カーボンオフセットに関する詳細情報

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